みやおかブログ

原材料名/ブログ(創作実話でない)

懐中時計

昔、まだケータイが無かった頃は腕時計で時間を確認していて、これが懐中時計の時代の人だとどんな感じだったんだろうと思ったので、一度買って使ってみたことがあった。結果としては「不便!」の一言に尽きるというか、どちらかと言えば時計ごときを仰々しく取り出すのが恥ずかしいので全然使わなかった。

でも、今は腕時計をせずにいつもポケットからスマホを取り出して時間を確認しているので、それがどうにもなんか19世紀末っぽいなって感じがしてしまう。不思議の国のアリスの白ウサギが懐中時計を取り出して急ぐ気持ちも今ならすごくよく分かる。あれはスマホ見ながら電車に乗り遅れないようにする光景だ。

 

ケータイの存在で変わったことといえば、映画や小説の話作りもだいぶ変わったんだろうなと思う。

エリック・ロメールという映画監督の『冬物語』という話が面白かったんだけど、それはまだケータイが無い90年頃が舞台になっていて、ちょっと間の抜けてる女の子がバカンスで男と知り合って別れ際に住所を書いた紙を渡すのだけれど、あろうことか自分の住所を書き間違えていて、おまけに実は身ごもっていて、それから連絡の取れないまま5年が過ぎてシングルマザーとなっているところから始まるというお話。そこから「パスカルの賭け」とシェイクスピア冬物語を織り交ぜて人生を見つめていくという展開。

自分の住所を間違えるとかもともとムリめな話だけど、やはりこれはケータイがあったらそもそも無理っぽいなと思うわけです。でも自分の住所を書き間違えるという行為すら哲学的に思えてしまうのがさすがフランス映画だなと思いました。